海炭市叙景
3月19日(金)曇り。近代文学研究を仕事にしている友人と、お互いの誕生日に本を贈りあうようになって10数年になる。私の誕生日、彼女が最初に送ってくれたのが佐藤泰志の『海炭市叙景』(集英社)だった。一読してそのしんとした寂しさと孤独感にうたれた。いまどきこんな小説を書く人がいるのか、と友人に尋ねたら、注目されている人なんだけど、亡くなったの・・という返事だった。佐藤泰志は1949年、函館市生まれ、(あの村上春樹と同年です)。地味だがひっそりと、だがひたむきに生きる若者を描いて切実なものがあったが、1990年自死。たしか妻と三人の子どもがのこされたのではなかったか。その死を新聞記事で見たとき、なんともやりきれない思いがしたのを覚えている。友人が本を贈ってくれたのはそのずっと後のことだった。作風そのままに繊細すぎたのか。先日、日経新聞に『海炭市叙景』映画化の記事が出ていた。「日本がバブルに躍った1980年代、片隅で生きる人々の哀しみや絶望に寄り添い、言葉を紡いだ作家がいた」とある。彼がこの作品を発表したころはバブルに踊っていた日本が、いまはまさにこの小説に書かれたような状況にある。皮肉なものだ。だが映画化されることで、再び彼の作品が読みなおされるとしたら・・・、歓ぶべきなのだろう。友人からは次の年に佐藤洋二郎、その翌年は佐藤正午の本が贈られてきたが、彼女の目の確かさはこの二人の活躍ぶりが証明している。(その後、佐藤という名の作家の本は届きません)。
今日からしばらく京都を留守にします。写真は「都わすれ」。私は都を忘れることなく帰ってくるつもりです。では、行ってきます。









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